会社を経営していると様々な難題に出合います。
悪い状況だけでなく、調子のよい時でも次の展開を考える必要が出てきます。
先の見えないVUCA(物事の不確実性が高く、将来の予測が困難な状態)時代の現代では経営戦略を立てるのもなかなかに難しいものになります。

また、いきなり「戦略を!」と思っても、実際の戦争の際を想像していただければと思いますが、自国にどれだけの兵器がどこにあり、兵隊、食料、輸送機関などもどれだけ揃っているのか、指揮系統はしっかり確立されているのかなど、自国内の情報収集が必要で、それと同時に相手国や周辺国の情報も知っておかないと戦略も立てようがないです。
経営戦略も全く同じで、自社の状況、他社の状況、その他の外部環境などをしっかりと把握してから出ないとしっかりとした戦略は立てられません。

そこで、古典的ではありますが、昔から使われているSWOT分析を利用し自社の置かれている状況等を分析することで、経営課題の洗い出しや先の戦略策定に活かしていただければと思います。

昔から語り継がれ使われているということは、それだけ多くの経営者が利用し価値を感じていると証拠でもありますので、是非取り入れてみて下さい。

実際には書き込む内容は慣れた方でないと難しいですが、わかる範囲で書いていくだけも参考になると思います。

SWOT分析の基本的な流れ

SWOT分析は、企業や事業の現状を評価し、戦略立案に活かすための効果的なツールです。
内部環境と外部環境を「強み(Strengths)」「弱み(Weaknesses)」「機会(Opportunities)」「脅威(Threats)」の4つの要素に分けて分析することで、経営の方向性や課題を明確にし、戦略的な意思決定をサポートします。
ここでは、SWOT分析の利用方法について具体的に説明し、どのように日常的な経営や事業戦略に役立てるかを解説します。

SWOT分析を活用するためには、以下のステップを順番に進めていくことが基本となります。
分析を行う際は、チーム内での議論やデータ収集を通じて、客観的な視点で進めることが重要です。

(1) 情報収集

最初に、企業の内部環境と外部環境についての情報を集めます。内部環境については、財務データ、社員のスキル、ブランドの認知度など、自社のリソースや能力に関する情報を集めます。
外部環境については、市場トレンド、顧客ニーズ、競合状況、法規制などの外的要因を把握します。

(2) 強み、弱み、機会、脅威を特定する

次に、収集した情報をもとに、自社の「強み」「弱み」「機会」「脅威」をそれぞれのカテゴリに振り分けます。
この際、強みと弱みは主に内部要因、機会と脅威は外部要因として分類します。分析チームでのディスカッションを通じて、できる限り具体的かつ定量的な視点で各要素を特定することが重要です。

(3) SWOTマトリクスの作成

「強み」「弱み」「機会」「脅威」を整理したら、それぞれの要素をまとめたSWOTマトリクスを作成します。
このマトリクスをもとに、今後の戦略立案に活かしていきます。SWOTマトリクスは、単なるリストアップではなく、要素同士の相互作用を理解しながら分析することがポイントです。

外部環境分析

外部環境の中ではマクロ環境とミクロ環境に分かれ、
マクロ環境では政治・法制、経済・景気、社会・人口動態、技術・情報化に分けることができ、
ミクロ環境では競合他社、潜在顧客、買手の競争力、売手の競争力、代替品に分けて考えることができます。

SWOT分析における外部環境分析は、企業や事業が影響を受ける外的な要因を把握し、それらを「機会(Opportunities)」と「脅威(Threats)」に分けて評価するプロセスです。
内部環境分析が企業の強みや弱みを明確にするのに対して、外部環境分析は、企業が直接コントロールできない外的要因に着目します。
ここからは外部環境分析の重要性と、機会と脅威に分けてそれぞれの要素を詳しく解説します。

1. 外部環境分析の重要性

企業の経営環境は、常に変化しています。例えば、新しい技術が導入されたり、顧客のニーズが変化したり、法規制や経済状況が影響を及ぼすことがあります。
これらの要素は、企業の成長にとっての「機会」となることもあれば、逆に「脅威」としてビジネスに悪影響を与えることもあります。

外部環境分析の目的は、これらの要因を事前に認識し、戦略的に対応することです。
特に、中小企業は大企業と比べてリソースが限られているため、外部環境の変化に迅速に対応できる体制を整えることが重要です。

2. 機会(Opportunities)

外部環境における「機会」は、企業にとって成長や発展のための好機を指します。
これを見つけ出し、戦略に組み込むことが、企業の競争優位性を高めるカギとなります。
以下に、一般的な機会の要素を紹介します。

(1) 技術革新

新しい技術が導入されることで、これまで以上に効率的な業務運営が可能になったり、新製品やサービスを提供できるようになることがあります。
例えば、AIやIoT、クラウド技術の進展は、多くの業界において業務プロセスを効率化し、コスト削減や新しい市場開拓のチャンスを生み出しています。

(2) 市場の拡大

消費者のニーズの変化や新興市場の出現も、大きな機会となります。
例えば、環境に配慮した製品の需要が高まっている場合、エコロジカルな商品やサービスを提供することで、競争優位性を確立できる可能性があります。
また、海外市場への進出や、新しいセグメントをターゲットとすることで、市場規模の拡大が期待されます。

(3) 法規制の緩和

特定の業界や製品に対する法規制が緩和されることも、企業にとっての機会です。規制の緩和により、新しい製品やサービスを迅速に市場に投入できるようになり、成長を促進するチャンスが広がります。

(4) パートナーシップの可能性

他社との提携やアライアンス、業界内でのコラボレーションも、成長の大きな機会です。
これにより、リソースを共有したり、技術やノウハウの交換が可能になり、単独では難しかった市場参入や事業拡大が実現します。

3. 脅威(Threats)

一方で、外部環境には企業にとっての「脅威」も存在します。これらは、事業の存続や成長を妨げる要因となり得るため、迅速かつ効果的な対応が求められます。
脅威を認識し、適切な対策を講じることが、持続的な競争力を保つためには欠かせません。

(1) 競争の激化

市場における競争が激化することは、企業にとって大きな脅威となります。
特に、価格競争や新規参入者の増加は、利益率の低下や市場シェアの縮小を招く可能性があります。
競争優位を維持するためには、差別化戦略や独自の強みを活かしたポジショニングが重要です。

(2) 経済の不安定さ

経済状況の悪化や景気の後退も、企業にとっての脅威です。消費者の購買意欲が低下することで売上が減少し、企業のキャッシュフローや財務状況に悪影響を与えることがあります。
特に、外部からの資金調達が難しくなる場合は、事業の拡大や維持に苦慮する可能性があります。

(3) 法規制の強化

逆に、法規制の強化も脅威となり得ます。例えば、環境規制や労働関連法規の厳格化により、企業が新たなコスト負担を強いられることがあります。
これに対応するためには、持続可能なビジネスモデルやコンプライアンスを強化する取り組みが必要です。

(4) 技術の急速な変化

技術の進展が企業にとっての機会となる一方で、対応が遅れると脅威にもなり得ます。
特に、既存技術が陳腐化し、新しい技術への投資が遅れる場合、競争力を失うリスクがあります。
技術変化に適応するための柔軟な組織構造や、イノベーションを促進する社内文化が求められます。

4. 機会と脅威のバランスを取る

外部環境分析においては、機会と脅威のバランスを見極め、どのように対処するかが重要です。
企業は、機会を最大限に活かすための戦略を策定する一方で、脅威に対するリスクマネジメントも強化する必要があります。
例えば、リーダーシップの強化や市場調査の徹底、競争環境への迅速な対応が有効です。

内部環境分析

内部環境の中では更に内部と外部に分けることができ、
内部ではヒト、モノ、カネ、情報(顧客情報、技術・ノウハウ、ブランド、企業文化)
外部では企業間連携、既存顧客に分けて考えることができます。

SWOT分析における内部環境分析は、企業や事業の内的な要因を評価し、「強み(Strengths)」と「弱み(Weaknesses)」に分けて分析するプロセスです。
外部環境分析が外的要因を把握するのに対して、内部環境分析は、企業の内部リソースや能力に焦点を当てます。
ここからは、内部環境分析の重要性と、強みと弱みについて具体的に説明します。

1. 内部環境分析の重要性

企業が成功を収めるためには、外部環境の変化に対応するだけでなく、自社の内部リソースや能力を正しく評価し、それに基づいて戦略を立てることが不可欠です。
内部環境を分析することで、企業がどのような強みを活かして競争優位性を確立できるか、また、どのような弱点を克服すべきかを明確にできます。

特に中小企業にとっては、限られたリソースを最大限に活用し、競争力を高めるための指針となるため、内部環境分析は非常に重要な役割を果たします。

2. 強み(Strengths)

内部環境における「強み」は、企業が競争に勝つために活かせる資源や能力のことです。
これを特定し、強化することで、持続可能な競争優位性を築くことができます。以下に、企業が考慮すべき代表的な強みの要素を説明します。

(1) ブランド力

強いブランドは、企業にとっての大きな資産です。顧客の信頼や認知度が高いブランドは、競争市場において差別化の要素となり、新規顧客の獲得や既存顧客のロイヤルティ向上に貢献します。
ブランド力を活かすことで、価格競争に巻き込まれず、利益率を維持できる可能性があります。

(2) 独自の技術力

自社が独自に開発した技術やノウハウは、他社には真似できない競争優位の源泉です。
技術革新が進む中で、先進的な技術や特許を保有していることは、競合他社との差別化ポイントになります。
これにより、他社が参入しづらい市場を独占できることもあります。

(3) 人的資源

優れた人材やチームワークも、企業の大きな強みとなります。社員のスキルや経験、リーダーシップ能力が高い場合、業務効率やサービスの質が向上し、顧客満足度の向上につながります。
また、社員のモチベーションが高い企業は、組織全体が活気づき、イノベーションや新しい挑戦に対して柔軟に対応できる強みを持っています。

(4) 財務的安定性

企業が十分な資金を持ち、健全な財務状況を維持していることも強みの一つです。
財務的に安定している企業は、成長のための投資や新しいプロジェクトに取り組む余力があり、外的な経済変動にも柔軟に対応できます。
これにより、競争の激しい市場でも持続的な成長を目指すことが可能です。

(5) 優れた業務プロセス

効率的な業務プロセスや、しっかりとしたサプライチェーン管理も、企業の強みとなり得ます。
業務の効率化が進むことで、コスト削減や納期の短縮が実現し、顧客からの信頼を得ることができます。
特に製造業やサービス業では、プロセスの強化が競争力の向上に直結します。

3. 弱み(Weaknesses)

内部環境における「弱み」は、企業が成長や競争において障害となる要因です。これらの弱点を正確に認識し、改善することが競争力の強化につながります。
以下に、企業が考慮すべき代表的な弱みの要素を説明します。

(1) 資源の不足

企業が持っているリソースが限られていることは、弱みとなり得ます。例えば、技術的な資源や人材、財務資源が不足している場合、新しいプロジェクトへの投資や技術開発が滞り、競合他社に遅れをとる可能性があります。
中小企業は特に、資源の制約がビジネスの成長を制限する要因となることが多いです。

(2) ブランド力の弱さ

ブランド認知度や信頼性が低い企業は、競争の中で不利な立場に立つことがあります。
顧客が自社の製品やサービスを認識していない場合、新規顧客の獲得が困難になり、結果として売上や市場シェアの拡大が難しくなります。

(3) 経営体制の不備

リーダーシップや組織構造が不十分な企業も、内部的な弱みを抱えていると言えます。
意思決定のスピードが遅かったり、部門間の連携が悪い場合、外部環境の変化に迅速に対応できず、機会を逃すことがあります。特に、急成長している企業では、適切な管理体制が整っていないことが問題となることがあります。

(4) 財務的脆弱性

資金繰りが悪く、借入に依存している企業は、経済的なショックや市場の変動に対して脆弱です。
十分な資金が確保できない場合、必要な投資ができず、新しいビジネスチャンスを逃すリスクがあります。
また、過剰な負債がある場合、金利の上昇などでキャッシュフローが逼迫し、事業継続が困難になる可能性があります。

(5) イノベーションの欠如

企業が新しいアイデアや技術に対して閉鎖的である場合、それは競争において大きな弱みとなります。
市場は常に変化しており、特に技術や消費者のニーズが急速に進化する現代において、イノベーションを拒むことは競争力を失うリスクを増大させます。

4. 強みを活かし、弱みを改善するための戦略

内部環境分析を行った後、企業は強みを活かし、弱みを改善するための戦略を策定することが重要です。
例えば、財務的に安定している企業は、その資金力を活用して技術開発や市場拡大に投資することができます。
また、弱みを改善するためには、組織改革や新しい人材の採用、さらには外部の専門家を活用することも有効です。

企業が持つ強みをさらに強化し、弱みを最小化することで、競争市場において持続可能な成長を実現できるのです。

SWOT分析を効果的に活用するためのポイント

SWOT分析を有効に活用するためには、いくつかのポイントを押さえておく必要があります。

(1) 定期的な見直し

SWOT分析は一度行えば終わりではなく、外部環境や内部状況が変わるたびに見直しを行うことが重要です。
特に、技術の進展や消費者のニーズの変化が激しい業界では、定期的な分析が必要です。

(2) 客観性を持つ

分析を行う際は、主観的な判断に頼らず、データや事実に基づいて客観的に進めることが重要です。
特に、企業の弱みを正確に認識し、改善策を検討する際は、外部の専門家の意見を取り入れることも有効です。

(3) 全社員の意見を取り入れる

SWOT分析は、経営層だけでなく、現場で働く社員の意見も反映することが重要です。
現場の意見を取り入れることで、実際の業務や顧客対応に即した分析が行え、より具体的で実効性のある戦略を立てることができます。

まとめ

SWOT分析は、企業の内部と外部の要素を総合的に分析し、戦略を立案するための強力なツールです。
強みを活かし、弱みを補いながら、外部環境の変化に柔軟に対応するための戦略を構築することで、企業は競争力を高め、持続可能な成長を実現することが可能です。
SWOT分析を定期的に活用し、経営環境に適応した柔軟な戦略を実行することが、成功への道筋をつくる鍵となります。

自社のみでの取り組みが難しい際は、お気軽にお声がけください。

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